タラの芽、数々あれど

タラの芽、数々あれど

神奈川県でも中西部のいわゆる相模と呼ばれる地域、とりわけ丹沢山中などで春になると山菜を追い求める方も少なくはないだろうと思う。

その山菜の中でもタラの芽は王者的な存在で、私も春の味覚として収穫し、食している次第である。

しかし、どうにもタラの木に似たような植物も多く、しばしば翻弄されるのだが、今回は備簿録的にタラの木(芽)について書き残していたいと思う。

タラの木(芽)とは

植物学的には、以下のとおりである。

鬼ダラ(オダラ)と呼ばれるトゲの目立つ個体

【分類】ウコギ科/タラノキ属

    落葉広葉/低木

【漢字】楤木(たらのき)

【別名】ウドモドキ/オニダラ/メダラ

    タランボ/ヘビノボラズ

    トリトマラズ

【学名】Aralia elata 

【英名】Japanese Angelica-tree

【高さ】3~5m

特筆すべきは、タラの木と言えばトゲトゲを連想するがメダラといってとげの無いものも同種であるそうだ。

一方で、とげの目立つものはオダラ(鬼ダラ)と呼ばれるようで栽培しているものはメダラが多いようである。

しかし、トゲの無い(少ない)メダラの存在は厄介と言えて、似た植物は意外多いので他と注意する必要はありそうですね。

メダラと呼ばれるトゲの無い個体

下流部の河川敷などや線路わき等の山野にも多いので、洞察力は必要となるかもしれないのだが、これも経験など必要になってくるので、それなりの勉強や経験は必要だろうと思う。

昨今、芽吹きの時期は、温暖化の影響もあってか丹沢界隈では4月上旬がベストシーズンになっているのかと思いますね。

タラノ芽に似たもの

それでは、タラの木のようだが?と言った植物を取り上げて効果と思います。

タラの木を代表とするウコギ科の植物の新芽は、食用となるものが多いのですが、採集には注意したいものもあるので、ここに取り上げたいと思います。

ヌルデ(白膠木)

タラの芽によく似るヌルデ
一見するとタラの木に似るが

日本、中国、ヒマラヤ、東南アジア各地に自生する。日本では北海道から琉球列島まで、ほぼ全域で見られる。

神奈川県内でも河川敷や線路際などに見られる植物で、トゲの少ないメダラに似る。

パイオニア植物にはよく見られる性質である、伐採などにより自身の成育に適した環境になると芽を出すという適応であり、代表的なもので、低木として道路脇の空き地などに真っ先に出現するものである。

【分類】ウルシ科 ウルシ属

    落葉広葉 小高木

【漢字】白膠木(ぬるで)

【別名】フシノキ

【学名】Rhus javanica

    var.roxburghii 

【英名】Sumac tree

【高さ】5m~15m 

伐採など森林が攪乱を受けた場合に多く出現し、ヌルデの語源は、傷つけたときに出る白い汁を塗り物に使用したことに由来するという。

敏感な方以外は、ウルシに似たかぶれなどの症状は少なく、また軽いようである。

タラの芽に似た新芽は食用としても用いられることもあるとされるが、ちなみに私の住まいのある地域では、相模川などの河川敷に多く自生し、手軽なためか昔から好んで採集されている。

ただし、食用には自己責任でお願いしたいところだが、タラの芽に引けを取らない食感という個人的な評価をお伝えしたい。

タカノツメ

タカノツメの新芽

むしろ、タラの木よりもコシアブラに混同されることが多く、食用となるがそれほどの味は期待しない方が良いだろう。

【分類】ウコギ科 タカノツメ属

    落葉広葉 小高木

【漢字】タカノツメ(たかのつめ)

【別名】イモノキ

【学名】Evodiopanax innovans

【英名】Takanotsume tree

【高さ】5m~15m 

冬芽がタカのツメに似るところからこの名前が付いているようである。

個人的な感想はハーブ的な香りが強く好みは分かれる印象であった。

ハリギリ

ハリギリの新芽、トゲに注目

タラの木に比べて、とげが大きく目立つのが一番の特徴。

山菜とする新芽については、タラの木に負けないくらいに美味しいものだとベテランの評価であり、自分も実感している。

【分類】ウコギ科 ハリギリ属

    落葉広葉 高木

【漢字】針桐(はりぎり)

【別名】ハリキリ/ハリハギ/センノキ/セン

    テンングノハウチワ/ミヤコダラ

    テングッパ/ニセケヤキ/アクダラ

    チマキバラ/カシワ

【学名】Kalopanax septemlobus 

【英名】Castor aralia

【高さ】15m~25m

ウルシ

ヤマウルシの新芽

意外だが、原産地は中国からヒマラヤにかけての地域とされ、日本国内へは縄文時代より前に朝鮮を経て渡来したと考えられている。

漆を採取するため7世紀には広く栽培されていた外来の帰化植物である。

比較的標高の高い落葉樹林でみられるツタウルシと北日本の山間部、丘陵の日当たりがよい林縁等に多く見られるヤマウルシがある。

【分類】ウルシ科/ウルシ属

    落葉広葉/高木

【漢字】漆(うるし)

【別名】─

【学名】Rhus verniciflua

【英名】Lacquer tree

【高さ】7m~10m

ツタウルシはツル性の植物なので、一見してもタラの木と間違うことはないだろう。

ヤマウルシの若い新芽の部分は食べることができ、天ぷらや味噌汁にして食することもあるが、枝葉や幹から分泌される樹液のウルシオールという成分によりアレルギー反応を生じ、かぶれることが多いので一般向けとは言えないだろう。

コシアブラ

丹沢などではそれほど目にすることもないコシアブラの新芽

鮮やかな緑色の見た目と食べたときの独特な風味が特徴で、山菜の女王などと呼ばれるほどである。

【分類】ウコギ科/コシアブラ属

    落葉広葉 高木

【漢字】漉し油/濾し油

【別名】ゴンゼツノキ/ゴンゼツ

【学名】Chengiopanax

    sciadophylloides

【英名】Koshi-abura tree

【高さ】5m~18m

ウルシのように幹から樹脂を取り、漉して塗料として使用したために「漉し油」と名がついている説がある。

ただし、丹沢などの神奈川県内ではブナ帯にやや稀に生える程度で収穫のハードルは高いと言える。

カラスサンショウ

カラスの食べるサンショウから名がついているとか。

春の若芽は、「タラの芽ダマシ」などと呼ばれることがあるほど似ているので注意が必要である。

全体に棘が生えており、頂生する芽などパッと見はタラノキなのだが、複葉の部分にタラノキ特有の鋭い棘が無く、産毛がなくツルツルして光沢がある。

【分類】ミカン科 サンショウ属

    落葉広葉/高木

【漢字】からすざんしょう(烏山椒)

【別名】カラスサンショウ/アコウザンショウ

【学名】Fagara ailanthoides

【英名】Japanese Prickly-ash

【高さ】5m~15m

タラの木の芽に比べて、短小で光沢があるといった具合に慣れれば判別はつくだろう。

ちなみにこの花の蜜を集めたハチミツは珍重されているようである。

神奈川県内の丹沢や箱根などの山域においてもタラの木と同じ場所に生えることが多く、収穫には厄介な存在と言えるだろう。

タラの芽に比べてボリュームがない分、残念だが同じく食用とされる山菜である。

以上、タラの芽狩りに備簿録として書き残してみた次第だが、お役に立つことがあれば幸いであると思っています。