串川
- 2017.07.17
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丹沢の渓流釣り場として忘れられている感のある串川(くしかわ)だが、中津川と道志川の間、相模原市緑区に全長13㎞の流域を持つ相模川支流の一つで、意外性に期待したい好渓。
昨今では水質も安定し、漁協の管理次第では、裏(北)丹沢でも数少ない里川の渓流釣り場になりえるポテンシャルを秘める。
流域データ
流域主方位 NE ( 64 °)
主流長 13.2 km
最高標高 631.5 m
最低標高 69.3 m
平均標高 290.6 m
流域平均傾斜 19.5 °
植林地 23.3 %
支流
大掘沢
大橋沢
鞍骨沢
谷戸沢
馬石沢
南沢
桜沢
南沢
怒田沢
大沢入沢
根無沢
竹野々沢
栗焼沢
ノヤノ沢
栗指沢
東北尾沢
北尾沢
尻久保沢
稲生沢
日陰沢
韮尾根沢
北尾付沢
小地原沢
長竹沢
串川と渓流釣り
串川取水堤が完成する以前のかつては全域にヤマメが存在したと言われ、かつては上流部でもサクラマスの姿が見られたという。さらには、昭和期の聞き取り調査で関東大震災以前の串川は水量が豊富であったという地元古老からの話もあったというので、その姿は現在では想像できないものであったようだ。
流域には歴史も多く語られ、鳥屋の「御屋敷」「道場」「宮之前」などは、あの菅原道真が九州の太宰府に左遷された折に離散した一族が隠れ住んだといわれる由緒正しき地名なのだとか。
しかし、ヤマメの釣れる川としては、都内あるいは神奈川県内の釣り人であっても、あまりにも馴染みのない存在でもある。
関東大震災の渓魚全滅以後の昭和20年代に水沢川から移植したなどの記録も見られるが、渓流釣り場としてはザンネンながら現在の上流部はアブラハヤを見かける程度で、いわゆる渓魚の姿は乏しい。
しかし、現在は水質も向上し、近年の串川は取水堤以遠では有志の放流や教育関係のイベント的放流がなされるなど、渓魚も散在してはいるようだ。
じっさいに、「竿を出すなら下流部がよい」などと話も聞き、確かに相模川本流にもヤマメは存在しているようで、夏場などに刺してきたヤマメが下流で釣れることもあるようだ。
近年では、取水堤付近での遡上魚の釣りに人気があり、増水時などには多くのアングラーを見かけるようになった。
中流域以遠のヤマメについては、おそらく、わずかな放流による個体と種沢による残存の在来種が少なからず繁殖しているものと思われる。
「鳥屋地区」などの最上流部は水枯れする時期も多く、個人的には絶望的とみるが、中下流域においては里川の様相を強く感じる好渓に見える。
じっさいに昭和初期のかつては馬石あたりから鳥屋までヤマメ釣り場として知られており、桜野に桜沢マス釣り場、南沢に串川マス釣り場があった。
しかしながら、いざ入渓を考えると現在の串川は、津久井漁協が下流部のアユ以外に渓魚を管理しているか否かも不明といった雰囲気で、竿を出すアングラーもまれといった状況に躊躇してしまうところだ。
しかし、丹沢では忘れ去られている渓流釣り場の筆頭ともとれる串川ではあるのだが、放流や管理などが徹底されれば、素晴らしい里川の釣り場となりえるわけで今後に期待したいところでもある。
もし、一度探釣を考えているならば、尻久保川出合の中沢原~根小屋~長竹の間に趣のあるポイントがわずかながらあるのでお勧めしたい。
串川橋以遠の上流をと考えがちだが、葦が張り出す変化のない流れで最上流部は平時においても渇水著しく釣りにはならない。
気になるのは中下流域に存在するなどの沢筋群で、ここでヤマメの姿が確認できれば、関東大震災以前からの在来種ではないかという話も多く、こういった点では注目すべき渓流釣り場でもあるように感じる。
入渓には少々勇気が必要だが、釣果は気にせずにロマンを求めて竿を出してみるというのも一興であるし、もし釣れたのならリリースは徹底し大切にしたい。
串川の水量不足は鳥屋の河川争奪にあり
串川流域は歴史も多く、流域の古人は、林業や炭焼きなどの山仕事を中心に河岸段丘といった地形を活かし、過去は養蚕などが盛んな地でもあったという。
また、現在の串川は冒頭での説明とおりに開けた感のある明るい里川といった印象をうける。
しかし、串川の水量に対してその河岸段丘の規模があまりに大きく広いことに気づかれた方も少なくはないだろう。
これだけの河岸段丘といえば、普通はそれなりの水量を持つ河川の流域における地形の特徴ではないだろうか?
その疑問に答えるなら、かつては隣の中津川水系早戸川を串川は上流として有していた相模川の大支流だった歴史を持つのだからということだからだそうである。
地質学的に説明すれば、「河川争奪」と説明でき、有史以前のおよそ5万年以上前に地殻隆起によって、上流の早戸川は串川から切り離され中津川へと合流してしまったそうだ。
こういった経緯を経て、現在の串川は細い流れとなり、発達した河岸段丘だけが残ったということになる。
現在の串川
鳥屋道場
早戸川転向点の北西には、「鳥屋地区道場」の南東(道路ぞい)に串川の谷底低地に続く平坦な「風隙」と言われる地形が今でも残っている。
鳥居原園地から道路(64号)を隔てた北に小さな丘が確認できるかと思うが、標高337mのこの丘は段丘の名残であり、この河成段丘面の北は扇型に平坦な地が北の串川の谷筋に向かって下っている。
この平坦な土地が河川争奪によって、約5万年前に流路を中津川に奪われた旧早戸川(古代串川上流部)の流路跡とも言われており、ちなみにこの水の絶えた谷合の水路跡、これを「風隙」と称する。
そういわれてみれば、宮ケ瀬ダム淡水前の早戸川流域の地図を確認してみると、旧落合地区(ダムで水没)で南東に急転向し、不自然に中津川に合流している点などから見ても合点がいくところである。
周囲の地形に似合わず、いまひとつ水量が乏しく感じる串川。じつは、中津川に上流部の早戸川を争奪された被奪河川であったいうことなのだ。
漁場管轄とライセンス
相模川漁業協同組合連合会
連絡先
神奈川県愛甲郡愛川町半原 914-3
TEL 046-210-3033
【URL】 ≫ http://www.sagamigawa-gyoren.jp
【イワナ・ヤマメ・ニジマス】 3/1~10/14
日=1,500円
年=5,000円
現=2,500円増
雑魚=800円
中学生=半額(日釣・雑魚)
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