サンショウウオ生息減少から見る丹沢イワナの再考

近年、丹沢でも減少傾向にあるサンショウウオという生物については、平成生まれ以降の若年層では目にする方も少なくなっていると聞く。

確かに、ボクの少年時代の記憶をたどれば、父に連れられた丹沢でのキャンプ(今より多くのキャンプ場が運営されていた)や林間学校でサンショウウオは、普通に見られた存在であった記憶がある。

しかし、近年では特定の沢での確認がされるのみのようであり、要因としては残念ながら、イワナによる食圧が問題視されているのも事実なのだ。

今回は、丹沢山塊のサンショウウオ減少とイワナ在来種の因果関係について考えてみたい。

丹沢山塊でのサンショウウオ減少とは?

まず、サンショウウオとは、カエルなどと同じに両生類であり、爬虫類のトカゲやヤモリに似るが、田園などに見られる水生性のイモリと同様の生物である。


出典: 丹沢大山自然環境 総合調査報告書 (神奈川県環境部 1997年)

サンショウウオ類は、生息の条件として、良好な自然環境を必要としており、その生息地は貴重な自然環境と言える。神奈川県北西部に位置し東西40 km 南北20 km に及ぶ丹沢山地においては、ハコネサンショウウオとヒダサンショウウオが分布することが知られている。

ちなみに、神奈川県内にはトウキョウサンショウウオが生息しているが、三浦半島の一部に確認されるだけで丹沢の生息はないとされている。

ところで、ハコネサンショウウオは、塔ノ岳、丹沢山 蛭ヶ岳、檜洞丸、大室山から流れ出す沢が分布の中心となっており、ヒダサンショウウオは、塔ノ岳、丹沢山、蛭ヶ岳、檜洞丸から流れ出す沢に分布しているとされるが、ボクの知る限りにおいては、これも古い調査によるものなので状況の信ぴょう性については現在と異なっている可能性も高いと考える。

サンショウウオの他にもトワダカワゲラ、ムカシトンボ、カワネズミと言った山地性で、冷水に生息する遺存症的な水生生物が生活しているが、これらの生息もかなり少なくなっているのが現状である。

このように、深山の沢奥に生息しているサンショウウオについても釣り人にとっては、無縁の存在のようで実は深い係わりがある生物であることがわかる。

サンショウウオの減少から見る丹沢イワナの分布

通説では、丹沢山地におけるイワナの自然分布は、相模川水系の道志川などの一部(ヤマトイワナ?)と考えられ、酒匂川水系をはじめ多くの沢では生息していなかったと云う。

記録によれば、

酒匂川水系では、1980年頃には管理釣り場から逃げ出したと考えられる養殖魚が見られる程度であった。しかし、1998年には中川川支流の板小屋沢で自然繁殖が見られたのが確認されている。これはイワナの生息例として、目新しい事例であった。

参考文献 PDF :丹沢大山自然環境 総合調査報告書 (神奈川県環境部 1997年)
第6章 沢の自然とその方法 保護
1 丹沢のサンショウウオ類

これを疑わなければ、酒匂川水系におけるイワナの生息は1980年代以降ということになる。

食圧(イワナがサンショウウオを食べてしまう。)による現象が見られるとされるサンショウウオだが、これを踏まえた考えによれば、イワナが多くサンショウウオが減った河川はイワナの生息が近代に入るまでなかったということになりはしまいか。

とりあえず、この記録を見る限りにおいては、酒匂川水系におけるイワナの自然分布は過去になかった事が濃厚となる。

世附、中川、大又川を上流に持つ酒匂川水系に古来よりイワナの自然分布がなかったとするならば、相模川水系中津川上流の各支流や道志川の各支流が可能性として残る。

今一度、確認の意味で繰り返しとはなるが、丹沢山塊におけるイワナ在来種の再考である。

道志川支流神の川や本流上流域の支流、丹沢とは尾根一つ北側になる秋山川支流は、伝承の域を出ないまでも古来よりイワナ在来種が生息していたことは濃厚である。

しかし、これらの流域でサンショウウオの減少と生息を語る記録は未だボクは知らない。

在来種がヤマト系イワナであったか、ニッコウ系イワナであったのか以前に丹沢山塊におけるイワナの自然分布が、そもそもあったのか?という疑問がサンショウウオによってヒントの一つになったことを今回はご報告しておきたい。

いずれにしても、丹沢在来種であるイワナの存在があったのかどうかは、未だに謎のままではあるが、いずれ現役を去る身においては後進に何らかのヒントを残したく今回はポストした。受け取り側次第ではあるが、サンショウウオの存在は大きいかと思う。