イワナに関するエピソード

残念ながら丹沢における現在のイワナは、どうも近代に入ってからの放流魚に由来するもののようだが、このイワナという渓魚については実に多くの逸話がアングラーの中で語られている。

今回は、経験と聞いた話を取り混ぜていくつかの紹介してみようと思います。

イワナたちとのエピソード

episode.1 山親父(ヤマオヤジ)と雷雨

 かつて、「人面魚」ブームがあったことを覚えておられる方も少なくはないでしょう。

ちょうどこのころの話ですが、当時の釣友との同行で軽快にヤマメを釣っているさなか、ドライフライに“モッさり”と出てきた魚がおりまして見事にフッキング。

取り込めば、イワナらしき魚なんです。

「らしき」とは歯切れの悪い話ですが、この魚なんとハナの先がない!のっぺりとして目がおでこについた感じとでも言いましょうか、じつに奇怪な容姿でした。

相方のいうことには「これはヤマオヤジかもしれん!」、「罰が当たるかもしれん!」と大騒ぎ。

なにやら、マタギや渓流釣り師の間では、「まことしやかにささやかれ続けている」イワナの妖怪がいるのだとか。

気味が悪いので早速放してやりましたが、車までの帰りの道中は雷と土砂降りの雨で足元もドロドロといった散々な有様で、相方が「祟りじゃ」とつぶやいたのを今でも覚えています。

episode.2 共食いイワナ

 もう何年も前のことになりますが、当時ルアー釣り一辺倒のお客さんが、当時通っていた釣具屋さんにおられ、ある日のこと、某相模川河川の上流域に入って大物を仕留めてきた話をしてくれました。

記憶が正しければ、なんでもイワナカラーのミノーで42~43cmのイワナを釣ったそうです。

取り込んだ後、釣られたショックでしょうか?そのイワナが吐き出したものが20cmばかりのイワナで、おまけに彼のランディングネットの中では釣ったイワナと吐き出されたイワナが一緒に泳いでいたとか。

両生類や爬虫類ではよく聞く共食いの話ですが、「よくある釣り人の与太話」と取るか、イワナの「どう猛さと生命力の強さ」に感じ入るかは「あなた次第」ですがね。

episode.3 幽霊イワナ

 現流域のイワナには「幽霊イワナ」と呼ばれるガリガリにやせ細った魚体のものがいるそうです。

同じポイントで釣れてくるイワナはいたって普通で、食性が貧しいといった環境でもないのだとか。

何より、こういった魚体にもかかわらず体調で、40㎝近い大物も存在するそうです。

どういった理由からそのような個体が生息するのかは定かではありませんが、丹沢でよく耳にするのは早戸川上流の雷平以遠、とくに原小屋沢源流域。

釣ってしまっても、とりあえずは祟り(たたり)の類はないようですが。

episode.4 源流イワナは石を食う

 これは、よく言われるていることですが、「イワナは流れに流されないために増水時は小石を食べる」なんて話ですね。

科学的(生物学的?)には普段は緩いたまりなどで生活している小石を使ったケースを持つカディスが増水で流され、格好のエサとなっているとのことです。

とうぜんながら、イワナはこのカディスをケースごと食べてしまうわけで、増水時に腹の「ゴキゴキ」したイワナが釣れてくるのはたしかです。

しかし、本当にこういったケースドカディスを捕食することだけが、原因だとは誰も断定はしていないようですがね。

小石だけを食べる習性がないとも言い切れないあたりがイワナという魚の魅力かもしれませんね。

episode.5 角イワナ

 大きなイワナのなかには角(つの)をもったものがいるのだとか。

じつは、これもイワナはどう猛だという話であって、妖怪めいた話でも何でもありません。

大型のイワナは、しばしばカエルや小鳥に食いつくことがあるようで、それでも一気には呑み込めないようで脚をしばらく口の外に出したまま泳ぐ姿に…。

「角イワナ」とは、これを角だと見誤って昔から語られている話のようで、たしかに鳥の足が二本とも口から出ていれば、たしかに角のようには見えますが。

episode.6 イワナの胃に鳥の羽

 昔、渓流釣りのベテランから聞いた話ですが、大物の中には腹を裂くと、「大量の鳥の羽」が出てくることがあるらしい。

とくに黒い羽根がほとんどだそうで、おそらくは「カワガラス」が水中で泳ぐうちに大イワナに食われてしまったんだろうとのこと。

episode.5 に続く話ですが、「どんだけどう猛なのか」といったイワナの習性を知らされるお話です。

episode.7 昔話「イワナ坊主」

岩魚坊主は 昭和49年発行の「日本の民話3 福島篇(未来社)」に南会津の話として収録される「いわなの怪」 に登場する。

宮沢賢治の一編にも「毒もみ漁」として似たようなものがある。

いわなの怪のあらすじは次のようなものである。

楽をして根こそぎイワナを毒で獲ってしまう村人(木こりとも)を諫めるために 山奥にもかかわらず何処からとも無く一人の僧侶が現れ、「川に毒を流せば小魚まで死んでしまうのだ、己の子が殺されると思ってみろ。むごい事はやめなされ」とキビ団子を与えつつ説教を始めた 。

いうことを聞かずに毒流しをした村人は獲った巨大イワナの腹を割いてみると、ポロポロと見たことのあるキビ団子が転がり出てきた。

昨日の坊主はイワナの化身であると悟った村人(木こり)はバタリと倒れてしまった。

それを見た村人たちはそれ以来、渓に近づくことなく流れは清く戻ったというお話である。

以来、各地で似たような話がまことしやかに語り継がれている。

だからイワナは面白い

いかがでしたでしょうか?

国内におけるイワナは、「イワナ」と「オショロコマ」に大きく分類されるという定説にはなっていますが、本州だけでも「アメマス」、「ヤマトイワナ」、「ニッコウイワナ」、「ゴギ」と多種が存在します。

丹沢を中心とする県内では、近代に入ってからの放流由来のものが多く、在来種に疑問を持たれることの多いイワナですが、それでも魅力は尽きないようです。

まだまだ、もっと面白い話もありそうですが、今回はこの辺りで。

今回の投稿が、少なからず、渓流釣りの参考になったのなら幸いです。